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マンハッタンの再開発は、島の四方にじりじりと移動している。たとえばハドソン川近くの最西端を見ると、ミートパッキング地区とチェルシーが隣接している。前者は名前のとおり食肉加工業者が集約していた地区。14丁目を中心に、エッジーなセレクトショップやインテリアショップ、クラブなどが集まって、レストランも増えてきた。そのすぐ北側がチェルシー。倉庫街から、ギャラリーやデザインスタジオがひしめくアート街に変貌を遂げ、最近では高級コンドミニアムの建設も進んでいる。

そしてその上空に目を移すと、10thアベニューに沿うように、打ち捨てられた高架鉄道(ハイライン)が延びている。チェルシーのギャラリーの窓から見下ろすと様子がよくわかるが、空中に草木の生い茂った空き地が続く様は、「兵どもが夢の跡」といったもの悲しい風情。かつては鉄道沿いの工場や倉庫への物資輸送に活躍していたが、トラックが主流となってからはすっかり使用されなくなってしまった。

ところが、今、ここが人々の憩いの広場に変身しようとしている。

 
   
10月のある週末に、先行予約の人数限定で、初めてこのハイラインの一般公開が行われた。募集からあっという間に定員に達したことからも、このプロジェクトへの注目度の高さがうかがえる。まず驚くのはその見晴らしのよさ。あたかも空中散歩をしているようだが、考えればこれだけ長い展望台はない。そして車や信号に煩わされることもなく、ハドソン川をのんびり眺めながら、好きな場所に好きなだけたたずむことができる。

リノベーション案のキーワードは「普通じゃない、ワイルド、スロー、別世界」。人々が歩いたり、座ったり、横になったりできるプロムナードを中心に、季節の草木や花々をふんだんに植える。言葉とおりの空中庭園である。

 
   
プロジェクト発案のモデルとなったのは、やはり高架を再利用したパリのPromenade Planteeと呼ばれるプロムナードである。

一時はハイラインを取り壊そうという動きもあった。2001年、かのジュリアーニ前NY市長が退任直前に、ハイラインを解体するという書類に署名したのだ。しかし、ハイラインの保存とリノベーションを目的としたNPO「フレンズ・オブ・ハイライン」は、「住民による検証がなかった」と法廷に訴えて勝利し、書類を白紙に戻してしまった。そしてブルーンバーグNY市長が行った調査で、開発後の地域経済の活性化が数字で示されると、すぐに大掛かりな再開発プロジェクトが始動した。この辺りがさすが実業界出身の市長である。デザインコンペが行われたのが2003年。なんとも素早い動きである。

 
   
36カ国、720のチームから選ばれたのはField Operations and Diller Scofidio + Renfro。ガバナーズ島のデザインを勝ち取ったユニットDiller Scofidio + Renfroが今回も絡んでいる。

まずは来年中にGansevoortストリートから20丁目までがオープンし、順次北上していく。

地上の開発も相乗効果で進んでおり、度々フェスティバルが行われて開発の祝福ムードを盛り上げている。西端エリアからますます目が離せなくなりそうである。


Friends of High Line公式サイト
http://www.thehighline.org/



NILEport NY : Ayano Matsumae

東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。

       


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