ヨーロッパ、特にドイツのビジネスエリートにとって、仕事における最大の武器は、こんにちにおいてもより速いクルマなのである。瞬時かつ正確に仕事をこなしていくのに、いちいち飛行場にまで行ってビジネスジェットを待ってはいられない。それよりも自らアウトバーンを疾駆することで、誰よりも先駆けてビジネスを遂行できる、そう彼らは信じている。
つまり速さこそ社会における力であり、その速さを支えてくれるクルマこそ、優れたビジネスツールになる。代々のメルセデス・ベンツ、中でもそのトップクラスのハイパフォーマンスモデルであるAMGは、こういう人々によって熱烈に支持されてきた。と同時に、それらの人々は、家族と過ごす休日やバカンスなどにおいても、AMGと暮らすことを大切にしてきた。
そのメルセデスのラインナップの中でも、飛び抜けて速く、強力で、なおかつ豪奢なクルマが、CL 65 AMGである。
もともとメルセデスのエンジンのチューニングを手がけてきたAMGは、約10年前に当時のダイムラー・クライスラー社の傘下に入ったことで、AMG各モデルは、各車の開発の最初のステージから構想され設計されることになった。言ってみればノーマルのメルセデスの上を行くプレミアムブランドだ。
CLクラス自体がもともと上質なモデルである。2シーター・スポーツでも4ドア・セダンでもない2ドアの2+2ボディを持ったクーペというのは、世界的にもっとも贅沢なボディ形式と見なされている。特にヨーロッパでは、昔からこの種のクーペはアッパークラスの人々がリゾートでの足として使ったり、ドレスアップしてパーティに乗り付けるためのクルマだった。
だから優美なスタイリングと豪奢な室内空間が何よりも重視されている。
このCL 65 AMGもまた一見するとエレガントなクーペに思える。だが張り出したホイールフレアからはみ出しそうな20インチ・タイヤに気づくなら、ただ者ではないことが分かるはずだ。長いフードの中には6リッターのV12が押し込められ、これに二つのターボチャージャーが組み合わされている。それらは1.5バールという高圧でシリンダーに空気を送り込み、612ps、102kg・mという強烈なパワーとトルクを生み出し、贅沢なボディに素晴らしい加速性能を与えるのだ。
まさにこれこそ力の象徴であり、ごく限られた人々がそれを享受できる。そういう人たちは、実に360km/hまで刻印されたメーターを目前にしながらも、機械にすべてを委ねてビジネスに疾駆しているのだろう。
| |  |  |  |  |  |  | | | 写真中:ハイパフォーマンスモデルを心のままに操る、ドライバーズシート 写真下:エレガントなダイヤモンド形状のステッチをあしらったドアの内張り | | |
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