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翻訳家 柴田元幸 画像 翻訳家 柴田元幸 画像
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柴田元幸(しばた・もとゆき)
1954年東京生まれ。翻訳家、東京大学教授。ポール・オースター『ムーン・パレス』、スティーヴン・ミルハウザー『マーティン・ドレスラーの夢』、リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』、スチュアート・ダイベック『シカゴ育ち』、『僕はマゼランと旅した』などアメリカ現代作家の翻訳家、紹介者として知られる。ほか、エッセイや小説集などもある。2008年4月、自身が責任編集を勤める文芸誌『モンキービジネス』を創刊した。


イギリス セレッション CELESTION スピーカー 画像  
イギリス セレッション CELESTION スピーカー 画像  
イギリス「セレッション」(CELESTION)のスピーカー。ヨーロッパのものの方が音に柔らかさがあって、いいという。上の楽器は、アフリカの親指ピアノ。
 
学院生時代に塾でアルバイトをしていました。そのときの生徒が、建築家になって自宅兼仕事場でもあるこの家を設計してくれたんです。

一番重視したのは、日当たり、風通し。あとは、木をなるべく多く使ってほしいという注文も出しましたね。温かみのある木がいいんです。マンションのフローリングは傷つきにくくしてあるせいか、触れていると冷たい木が多い。僕は傷がついてもかまわない。素材感が大切だったんです。

ここは本当に居心地がいい。この仕事場ができてから、仕事の仕方がガラリと変わりました。建築家の彼が、設計の段階で仕事場がたくさんある家をコンセプトで考えてくれたんです。

一年中、締切が並行してやってくることが多い。大学関係の仕事、翻訳の仕事、僕が責任編集を務める文芸誌『モンキービジネス』の仕事、だいたい3つくらいの仕事をいろんな場所を使って同時進行できるのはありがたいですね。

やはり、家で仕事をしているときが一番安心です。あくびもできるし、音楽もいつも鳴り響いて。椅子も机も、一番好きなものを置いてある。ただ、翻訳だけは、ほかの仕事とは違っています。

僕は翻訳はどこでもできるんです。半日ほど翻訳をしていると、加速度がついてくる。音楽にひたるのと似た感じかもしれません。文章は音楽です。本来、流れるものです。意外にそのことを考えない人が多いのかな。

特に翻訳の場合は。僕はあまり文章を読むのが得意ではないので、音楽がない文章を許容できないんですね。もっと文章を読める人間だったら、リズムがなくても、何をいわんとしているか読み取れると思いますが、僕はだめです。正確であることは大前提で、かつ、いい流れを作る。それが推敲の役割ですね。



  文鎮 画像
  文鎮 画像
 
愛用の文鎮。翻訳をするときなど、資料を開けたままにしておくのにちょうどいい重さと、大きさ。文鎮なのに柔らかいところがミソ。
モンキービジネスの仕事も、編集とはいいつつも、僕の場合は原稿を読んで、誤字、脱字のチェックをすることが多い。

自分の翻訳を推敲する作業と、同じようなものです。学生の論文指導も、大きなビジョンでアドバイスができなくて、つい細部を直してしまう。木を見て森を見ないんです。でも、翻訳は木をちゃんと見ていさえすれば、森を見なくてもいい仕事だと思う。

モンキービジネスもすべての作品がそれぞれ違う木として、別の方向を向いているような印象があるといいなと思っています。全体として雑誌のカラーが決まってしまうのは嫌だし、同じ号で似た傾向の作品は入れたくない。

雑誌を作るときに決めたのは、古典をたくさん載せること、日本の作品と海外の作品に区別をつけないこと。それから、必ず読み切りにすることです。

第1号の「野球号」も、7月20日に発行された第2号の「眠り号」も、特集のキーワードを先に決めました。小説や文化に関わりがあるけれども、いままで文芸誌がやっていないテーマで作りたかった。カタチが先にあって、そのカタチをどう生かすか考える過程で、中身が出てきたりしますよね。

特に、詩人や、歌人は、型をもらうのを喜んでくれる人が多いみたいです。「野球号」に詩を書いてくれた田口犬男さんは、野球にそんなに興味がなかった。

モンキービジネスを始めたことで、結果として野球をテーマにした田口さんの素晴らしい詩が生まれた。そういうことが嬉しいですね。(談)




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