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開催15周年記念碑から当時の会場を臨む
当時のステージ跡から40万人が集った丘を臨む
そんな瀬戸際の状況下、4人はベセル村一の大牧場主、Max Yasgur(マックス・ヤスガー)氏のことを聞く。ラングが訪れると、そこには、すり鉢状の牧草地と木々と水辺が織りなす奇跡のような景色が広がっていた。どうしてもここで開催したい。
フェスティバルは、ヤスガー氏の強烈な個性なしには成立しなかったと言っても過言ではない。
氏は、ニューヨーク大学で土地に関する法律を修めたビジネスの才覚のある人物で、口にしたことは必ず守る意思の持ち主だった。ラング達が交渉に訪れた時には、ウォールキル村でのフェスティバル開催撤回に大きな不正を感じていた。
さらに、ちょうどこの年は飼料の不作が予想されていた。そんな折に土地を貸すのは良い収入源に思えたのである。
交渉は成立した。氏は地元住人の「ヤスガー製品不買運動」にもひるまず、反対を法的に論破してコンサートを実行させる。
丘の上から、ステージ跡と湖を臨む
氏は、その来場者を15000人と聞いていた。ところがいざ蓋を開けてみると、牧場に押し掛けたのは40万人以上。地元交通は麻痺状態、チケットチェックも不可能になり、「無料コンサート」への変更が宣言されるという有様。
そんな中の大雨。泥と食糧難と衛生設備の欠如が人々を見舞う。テキサスのコミューンから開催を手伝いに来たデブリンさんは、当時をこう回想する。「我々に降り注いだ雨は平等の象徴だ。あの3日間は、一生で一番安心感と平和とを感じた時だった。みんなイノセントで同じ目的を持っていて、大きな連帯感と統一感に包まれていたんだ。」 結果的に暴動もなく、若者達が人種を越えてかばい合う姿は世界を驚かせた。
最終日、壮大なフェスティバルの幕が下りようとする18日の夜明け、ヤスガー氏がマイクを取った。
「私はファーマーだ。50万人の子供達、君たちは私の息子より若いから、子供達と呼ばせてもらおう。私はこのフェスティバルを誇りに思う。40万人以上の若者が、ただ音楽を楽しむという目的のためだけに集まれることを、世界に証明したのだ。」
人々が伝言板としてメッセージを留め付けた木
40万人が去ったあと、ヤスガー牧場に残ったのはゴミの山と踏みしだかれた不毛の土地。
氏は地元民達に起訴され、2年後の1971年に牧場を手放した。そして1973年に心臓発作で亡くなった。ローリングストーン誌は、ヤスガー氏の勇気とロックへの貢献を誌面いっぱいに大きく讃えたという。
時間を現代に戻す。
ミュージアム展示場出口近く、「フェスティバルはカウンターカルチャーのベストとワーストの象徴」と綴られている。「ワースト」を恐れた住民達の反応も当然であったろう。彼らが目の敵にしたフェスティバルが、今や地域興しに使われているのは、皮肉でもある。
ミュージアムを出る。先ほどのデブリンさんが案内を務めてくれた。
「ここが、ステージがあった場所だよ。」
当時の出演者も去年同じ場所に立ち、「まだかつてのエネルギーが残っているのを感じる」とコメントしたそうだ。
そのすぐ側に一本の大木が。当時インフォメーションセンターがあった場所で、人々はこの木を伝言板に見立て、メッセージを留め付けたという。
ミュージアムには、それらのメモや手紙が残されている。丁寧な文字で、「黒髪のシンディへ:連絡が欲しい。住所を聞き忘れてしまったから。」 と書かれた一枚の紙皿が印象に残った。
それから39年。黒髪のシンディも白髪のシンディになっているかもしれない。彼女はこの紙皿を見たのだろうか。
Bethel Woods Center for the Art 公式サイト:
http://www.bethelwoodscenter.org
地図:
http://ja.wikipedia.org/wiki/
NILEport NY : Ayano Matsumae
東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。
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