この夏ニューヨークで、様々な意味で話題を振りまいているのが、「ニューヨークシティ・ウォーターフォールズ(The
New York City Waterfalls)」だ。ニューヨーク湾の4カ所に、それぞれ約27~36メートルの巨大な人工滝を登場させるという大型アートプロジェクトである。
作者はデンマーク生まれのアイルランド人、今世界のアートシーンで最も熱い注目を集めるアーティストの一人、オラファー・エリアソン。2年前、東京の原美術館でも個展が開催されたので、作品をご覧になった方も多いかも知れない。
彼の名を有名にしたのは、2003年に英国のテート・モダーンで開催された「The
Weather Project」だ。
この時は、たくさんの電球と鏡とミスト状の砂糖水を使ってホールに巨大な人工太陽を出現させたというが、このように、身近な産業素材と水、光、風などの自然現象を組み合わせて、あっと驚く美的体験を生み出すのが、彼の作風と言える。
今回のプロジェクトは、エリアソンにとっては初のパブリックアートである。1550万ドルという膨大な制作費も大きな話題になった。
公開前にタイミングを合わせて、MoMAとその姉妹美術館、クイーンズ地区の
P.S.1が大々的な個展を開催。展示はなかなか見応えがあり、今まで彼の名を知らなかった人達へのアピールもばっちりである。
近くのフェリー乗り場からは、4つの滝を巡るための色んなクルーズを特別に用意。NY市は滝を見に来る観光者による「棚からぼた餅」式経済効果を5500万ドルと皮算用していた。
ところが、だ。
いざ公開されると、評判があまり芳しくない。
見た人からは「できそこないのダムの決壊だ。」「水漏れ事故の補修みたい。」「醜い。」と散々な言われよう。
なぜか。
原因は、流水の背景に設置されている、建築足場のような骨組みだ。
ニューヨークを訪れたことのある方には、街の建築物の多くの外壁がこれらの足場に覆われていることを思い出していただけるだろう。これはもちろん意図的なもので、エリアソンが言うには、「ニューヨークの景観として見慣れた建築素材を使うことで、4つの滝をひとつの『建築物』として見ることを強調したかった」とのこと。
今日のパブリックスペースに対する複雑な考え方と取り組むべく、試行錯誤を重ねたエリアソン。偉大な滝と街の足場を張り合わせることで、「都市環境の内側で、自然をベースとした体験をする可能性を開き、環境・景観との関わり方を考え直す可能性を開く。」ことを期待していたが、その思惑は大はずれ、果ては「レプリカの岩で、足場を隠したらよかったのに。」と言われる始末。
ニューヨークで恐らくこの「足場」を愛でる人はいないだろう。日本の電線のように、いわば邪魔者。水辺ではことさら目障り感を呼び覚ましてしまったのであろう。