そんなスウーンが、今度は水上での活動に取り組んでいる。「Swimming
Cities of Switchback Sea」だ。

 | | | photo:Ayano
Matsumae | | 9月7日の夕闇迫る頃、マンハッタンの対岸ロングアイランドシティのある埠頭に集ったイモ洗い状態の見物人が、イーストリバーを一斉に見つめていた。
後ろでは奇妙な格好をしたブラスバンドが大音量で曲を奏でている。 マンハッタンがすっかり黒いシルエットとなって街の灯が広がり始める頃、青空の名残をわずかに留める水上に、小さなシルエットが現れた。
人魚や海生生物などの幻想的な彫刻で縁取られた、黒い蒸気船だ。
次には筏、次には帆舟、と、ゆっくりと7隻の舟が埠頭に集まった。どの舟もリサイクル品の手作りで、無人島から漂流してきたかのよう。今にも分解しそうなのもいる。
今回のプロジェクトでは、まず人々や企業から集めた不要品から、75人のエンジニアやアーティストが1年がかりで舟を制作。
完成後、40人のアーティストが乗り込んで、ハドソン川川上のトロイという街から3週間かけて川を下った。途中の寄港地では7隻をそのまま舞台セットに用いて、パフォーマンスを公演してきた。
しかし、なぜ、川下りを?
| |  | | | photo:Ayano
Matsumae |
2006年、ミシシッピ川で同じような試みを行ったが、それはマーク・トウェイン的な夢やエコロジカルな共同生活を含む、様々な理想の実験のためだった。
今回フォーカスしたのは美的体験だ。インスピレーションはベニス。芸術的表現の自由、彫刻的な自由、美学的な自由、その他全ての自由を本当に持つ何かを作るために、水上に浮かぶ幻想的な街を想定し、海のロマンチックな本質と、街のあり方を含むデザインを形にしたそうだ。
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Matsumae | | 今回は、Deitch Projectというプロジェクト志向のギャラリーとの共同プロジェクトである。
7隻の舟からロープが伸びて、埠頭の前に建つ
Deitch Project ギャラリーに入る。そこには姉妹が抱き合う姿を描いた巨大なオブジェがあり、ロープの下に繋がっていく。これはスウーンが夢に見た女性を視覚化したもので、いわば、7隻の守り神だ。
室内には、海中から立ち上がる都市をイメージした壮大な光景が広がる。古びた板、ドア、梯子、等身大の人々の版画原版、ステンシル、精巧な切り絵などに覆われた壁には、等身大の死神の姿も紛れ込んでいる。街の生成消滅を一度に見るようだ。
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Matsumae | | | | スウーンがギャラリーのオファーを受けるのは、ストリートとは全く別のアイデアを実現できるから。すなわち、ストリートでは使えない素材を使い、自分の脳内にあるクレイジーな都市を経験してもらう。
しかし、ギャラリーで活動すると作品が売れる。そのことにスウーンは罪悪感を覚える。スウーンは、常に自分の制作行為に対する絶え間ない葛藤の中にいる。
そして今やギャラリーだけでなく、その芸術性と影響力とに目をつけた
企業からも様々なオファーを受けるが、それらを頑なに拒み続ける。
「若いアーティストを起用したがるブランドの多くは利益優先主義で、労働や環境に対して不正なことをしているのが現状。アーティストは自分を取り巻く世界に、ある分量、何らかの責任を負っていると思う。我々はシンボルを創造する。それらのシンボルは、正しいこと、正しい人々に貸すべき。」 強い。そして、思い知らされる一言ではなかろうか。 |