4000m級の名岳が連なるスイスアルプス。この連峰の南斜面に広がる高級保養地レザンに、明日の世界にまなざしを向ける全寮制の学び舎がある。スイス公文学園高等部(Kumon Leysin Academy of Switzerland=以下KLAS)だ。1990年に開校した
KLASは、スイス・ヴォー州からの認可、欧州およびスイス国際学校連盟への加盟と併せて、日本政府からも在外教育施設の認定を受けた教育施設となっている。つまりこの認定により、
KLASは日本の高等学校と同等の資格を有する存在である。
スイスアルプスの南斜面にある高級保養地レザンと
KLAS施設。
日本人のための国際教育をスイスで実践している
KLASだが、そもそも国際教育とは、またその環境において育まれる国際人とは、具体的にどういった像であろうか? 公理的命題にも等しいこの問いこそ、
KLASが掲げる教育方針のひとつなのだ。
1980年代以降、日本人にとって海外での居住や就学は、身近な選択肢のひとつになった観がある。だがその一方で、金科玉条のように唱えられてきた『真の国際人』という理想像が確立されたとは言い難い。
KLAS渡邊博司校長は説明する。「これまで、日本人が描いてきた『国際人』は、ともすると英語が流暢に話せ、欧米人と同じような思考体系を持つことが理想像とされがちでした。しかしこうした考えからは、『まず日本人、かつ国際人』という国際人像は導かれません。日本人の特性を活かした国際人像というものがあってもいいのではないでしょうか」

ほとんどの生徒が参加する英語ミュージカルの演劇練習風景。
能動的な帰属意識が
KLASの伝統として息づく。
寄宿舎生活が育む絆は一生の宝。公文式学習法を活かした学習指導も特異な存在。
教職員の8割が欧米人という
KLASでは基本的に英語が公用語だ。ただし特筆すべき例外もある。
文部科学省の認定を受ける
KLASだけに、国語や日本史等、日本の高校教育カリキュラムに根ざした科目は日本語だ。協調性や道徳観念といった社会通念において日本人は、世界の模範となるような厳格な規範を自らの文化に内包する。

日本人としてのアイデンティティを育む国語教育。
日本人であることを、国際社会の舞台で顕示してこそ成立する真の国際人の定義。
KLASが国語や日本史の教育に力を入れる所為である。
KLASの様々なプログラムでは、世界の舞台で学び、同年代の感性を持つ若者たちと交流を持つ機会が多いのが特長だ。カナダ等の提携校との交換プログラム、世界100カ国からの高校生が集う模擬国連会議への参加、発展途上の国や地域に赴いてのボランティアなどなど、各活動への参加はすべて生徒たちの興味と自主性を基本に決定される。
高校時代という多感な時期の実体験を通じて形成される視座は、ときにその後の人生を左右するほどの影響力を持つ。国際感覚とは、様々な現場における実体験を通じてこそ形成されるのだ。
全寮制の生活は教員たちが親代わり。節度を重んじながらも各々の距離は極めて近い。
KLASの国際教育の哲学を支えるもうひとつの柱に、英語教育が挙げられる。英語が同校における公用語であることは既述の通りだが、特長はそれだけではない。日本人の英語教育に特化したネイティブ・スピーカーの教員たちが、個々の能力に応じてすすめる授業は柔軟性に富みアカデミックだ。生徒たちが英語圏の人間に比肩するほどのアカデミックな英語力を身につけられるのも、それが学習の体系として徹底されているからにほかならない。当然、海外での大学就学を目指す生徒には、数学や理科、社会もすべて英語で授業をおこなう。
KLASの教育方針が視野に入れる進路の選択肢は、まさに世界中といっても過言ではない。しかしながら、「スイスの地でなぜ英語教育なのか?」という問いがあることも事実だ。スイスは隣接する独仏伊それぞれの言語に加えてラテン語系のロマンシュ語の計4カ国語を公用語とする連邦国家である。英語は憲法に明記はないものの、4つの公用語すべての地域で通じる事実上の公用語となっている。
国連やユネスコ等、様々な国際機関が集中するスイスだけに、英語は国際社会の活動において大原則なのだ。
『一人ひとりの能力を最大限に伸ばし、地球全体の調和と共生をめざして行動する人材を育成することにより、地球社会に貢献する』
KLASが掲げるこの教育理念は、あくまで人間としての成長を第一義とする。寄宿舎生活を通じて養われる自立性と協調性は、学習で得られる以上に人間形成の糧となる。寮内での生活は、
KLAS三年間の就学を通じてもっとも時間的な割合を占める。開校以来
KLASには、自己責任のもとで行動し、他者を尊重する伝統が息づく。
スイス公文学園高等部。明日の世界を牽引する人材の学び舎である。