反省しない投資家たち
「投資したのは失敗だった。バブルとわかっていれば投資しなかったのに」。バブルの波に乗ってしまい投資に失敗した人々は反省の弁を語ります。しかしこの言い訳には嘘があります。なぜなら彼は、とくにプロの投資家であればあるほど、バブルだとわかっていたからこそ投資したのですから。
投資経験の少ない人は、恐怖心からバブルに近づかないか、あるいは、手を出す場合には、バブルが崩壊する直前というパターンがほとんどです。バブルの波で儲けそこなうか、実際に損をするか、いずれにせよ、損して終わることが多いです。
バブルにおいて、バブルと気づかないことはあり得ず、むしろ、ほとんどのバブルはプロの投資家によって作られ、終息させられるものなのです。そのメカニズムは単純です。
プロの投資家は、顧客である資本家の資本を預かり運用しています。そこには、当然のように競争相手がおり、ライバルよりも結果を出さなければ資金は引き上げられ、他へと流れてしまう。プロにはバブルが発生しているときに、リスクの少ない方法で地道に運用をする余地が残されていないのです。だからこそ、彼らはバブルだと知りつつも、ぎりぎりのところまでいかざるをえない。先に下りた方が負け。まるでチキンレースです。プロだからこそ、バブルをいち早くみつけ、最大限に乗ろうとし、時にはバブルを自ら作り出すこともあるわけです。バブルがなくならないどころか、むしろ頻発するようになった背景にはこうした事情があります。このように、バブル市場の参加者の多くがこうしたプロの投資家たちで占められるようになったために、その値動きは激しく大きくなり、些細なことで突然膨らんだり破裂したりする。バブル自体の質が変化しつつあるのです。
おばた・せき
慶應大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)准教授。個人投資家として積極的に投資し続ける行動経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年、東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省、99年退職。2001~03年、一橋経済研究所専任講師。03年より現職。01年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)を取得。著書に『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)。
サブプライムショック後の世界
1929年の大恐慌は、世の中がひっくり返るようなインパクトがありました。しかしながらすべての人が損をしたために、つまり100億をもっていた人の資産が10億になり、10億の資産が1億になっただけのことですから、勢力図に変化はみられませんでした。既成勢力は大損をしても残っている額がその他大勢より多いわけですから既得権益構造が残されたわけです。
ところが、今回のサブプライム問題ではそうではありませんでした。サブプライムショックによる金融恐慌は、株式などのリスク資産の暴落だけでなく、米ドル資産への不信感から米ドルの暴落をも招き、投資家たちは穀物や原油など実体ある“モノ”に投資をしました。それによって原料価格は高騰し、ロシアや中東の資源国が潤い、世界経済の覇権国家であった米国の没落を招きかねない事態となりました。
現在のこうした状況は、大恐慌で行き詰まったドイツやイタリアが破滅的な勝負に打って出た一方、大恐慌に陥った米国が戦争景気によって回復し、戦後、世界経済の覇権国家としての地位を強化した第二次大戦時に近いという人もいるほどです。つまり、マネーの争いが、マネーにとどまらない覇権争いに繋がる可能性が生じてきているということ。今回のサブプライムショックは、そういう意味でエポックメイキングな出来事でした。
動乱期を生き抜く投資スタイル
我々が体験しているのは単なるバブルの崩壊ではなく、世界経済の覇権の移動です。では、この“動乱期”において、個人投資家はいかに行動すべきでしょうか。常識的に考えれば、こうした時期にリスクをとってお金を増やそうとするのは危険です。同時に、みながそう思っている時期だからこそ、チャンスであるという捉え方もあります。
我々個人投資家がやれることは、あらゆるシナリオを想定しておくこと。トリプルAの債券ファンドが破綻してしまうような時代です。リスクをとりたくないからといって、国債や銀行預金だけでは資産を守ることはできません。
たとえば、どんなシナリオになろうとも必ず需要があるもので、まだ誰も注目していないもの。妥当な値段や買い時がいつなのかが、わからないといったものがもしかしたら“買い”なのです。そういう意味では日本株への投資も有効かもしれません。これだけ政治が絶望的な状況のなかで、生き残っているこの国には成長の余地がまだ残されているという考え方もあります。新興国の株式を買うのは怖い状況ですが、あえて逆張りするなら、豊富な資源を保有しながらその潜在力を活かしきれていないブラジル株がさらに暴落した場合や、世界一の暴落をみせたベトナム株など、極端に値下がりしたものの中から可能性のあるものを選ぶという考え方を推奨する人もいます。難しいのは買い時です。暴落するときには、理由がないので、いつが底かわからないものです。したがって、買う場合には、少しずつ時間を置いて買い増していくのが良いでしょう。
あらゆるシナリオを想定し、時間的な分散投資を心掛ける。ただしリスクを恐れない。これが動乱期を生き抜く投資スタイルだと言えそうです。