サブプライム・ショック以後、世界経済のパラダイムは大きく変化しています。こうした投資環境の変化は、これまでセオリーとされてきた資産運用の常識が通用しなくなることを意味しています。
まず認識しなければならないのは、世界経済の景気拡大期は終わったということ。この景気後退、あるいは停滞期は少なくとも3年、長ければあと10年は続く可能性があると見ています。
これまで世界経済を牽引してきたのは間違いなく消費大国アメリカです。しかし、その頼みの綱も1970年代の状況に逆戻りしつつあります。70年代のアメリカ経済は不況を極めており、株価はほとんど値上がりしていませんでした。そのかわりに世界経済を支えていたのが高度成長期にあった日本です。今で言うところの新興国の役割を果たしていたわけです。
90年代後半から2000年代にかけて、その役割を担っていたのが、高い経済成長率をみせていた中国とインドです。しかし、両国とも今後その成長率を鈍化させていくでしょうし、しかも中国は今危険な状態にあると言わざるを得ません。
彼の国の資本主義経済の実体は、無理な統制経済下で発達したかなり歪んだもの。今年の初めから下がり続けている不動産価格も気になるところです。タイミングはわかりませんが、近い将来深刻な経済危機に陥る可能性すらあります。
中国とインドは、ともに圧倒的な人口を誇り、教育水準も高い。GDPとは人口と教育水準をかけ合わせたようなものです。そうした条件を備える国家は、中国とインド以外にはもう存在しない。タイやベトナムはもちろん、ヨーロッパも世界経済を下支えできるほどの存在とはなり得ない。
つまり、世界経済を牽引してきた米国経済が停滞し、それにかわる存在はもはや存在しない。それらの事実は、世界経済全体が景気後退期に入ったことを意味しています。
「アメリカ経済が停滞しても、他に引っ張る国があればいい」。エコノミストたちのこの言葉は楽観論に過ぎないのです。
我々が今、直面しつつあるのは、これまで安定したパフォーマンスをあげてきたはずの資産運用の常識が、もはや通用しないという投資環境です。たとえば、「国際分散投資による長期資産運用」ですら成り立ちません。
まずは「国際分散投資」という常識ですが、これまで違う値動きをする国内外の株式と債券に分散投資をしておけば、たとえば国内株式が値下がりしても、外国株によって収益の損失を補うことができていました。
しかし、「世界同時株高」や「世界同時株安」という言葉が頻繁に聞かれるようになった、2000年代以降、国内株式と海外株式のみならず、コモディティ含め、各々の金融商品が同じ値動きをみせるようになってきました。
各国経済の連動性が高まり、たとえばアメリカ株が下がればすべての国の株が下がるように、分散投資のメリットが低下しつつあると言えます。
もう一つの資産運用の常識、それは「長期での資産運用」です。これについても、そろそろ見直さなければなりません。もちろん、その複利効果は大きなものですが、それも景気拡大期なればこそ。景気後退局面においてもそのまま運用を続ければ、資産を大きく目減りさせてしまうことになりかねません。
これまで個人投資家の理想のスタンスとされてきた「国際分散投資による長期資産運用」の最大の弱点は、世界経済の拡大を前提としている点にあります。しかし、その前提が既に崩壊しつつあるのです。
このような状況では、ハイリスクハイリターンを狙うべきではありません。多額の資産をおもちの読者ならなおさらのことでしょう。となれば、とるべき基本スタンスは自ずと見えてくるはずです。
アメリカ経済の底が見えるまでは資産を「現預金」で保有し、長引く不況を想定すれば「外貨預金」もポジションに入れておきたい。日本と他の国々との金利差は世界的に縮小するはずですから、そのタイミングで少しずつ買い増ししていく。さらにリターンを狙うなら「株式」もはずせないでしょう。
買いのタイミングは、やはりアメリカ経済の動向次第です。その景気がどこで底を打つのか。ポイントはずばり、「住宅価格がどこで下げ止まるか」の1点です。
本来であれば雇用統計を見れば景気動向がわかるのですが、今回は住宅バブルという特殊な状況ですから、住宅価格に着目するのがいい。
いずれにせよ、資産運用をこれから始めるには今こそチャンスです。
中原圭介 (なかはら・けいすけ)
ファイナンシャルプランナー、エコノミスト。金融コンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」ディレクターとして活動。顧客の資産運用コンサルティングを行う傍ら、執筆・セミナーなどで投資家教育の普及に努めている。著書に『株式市場「強者」の論理』(ナツメ社)、『株の勝ち方はすべて外国人投資家が教えてくれる』『仕手株でしっかり儲ける投資術』(共に、日本実業出版社)ほか、近著に『サブプライム後の新資産運用』(フォレスト出版)。内容の普遍性、予測の正確性には定評があり、ファンも多い。
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