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NY Report vol.99 事業家が追い求めたもの - Storm King Art Center(2)
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事業家が追い求めたもの Storm King Art Center 画像
©Ayano Matsumae
ストームキング・アートセンターは、公営ではなく、私営の施設である。
創設者は、地元で金属の留め具製造業を営んでいた故ラルフ・E.オグデン氏と、その娘婿、H. ピーター・スターン氏。1958年、娘婿のスターン氏に会社を売り渡し、リタイアしたオグデン氏、「十分なお金を得たから、今が使う時だ。」と、アートセンターを創設すべくファミリー基金を作り、土地と建物を買い、早くもその2年後に、ストーンキング・アートセンターをオープンした。
©Ayano Matsumae
二人は何よりも周囲の田園風景を愛していた。当初の目的は、そんな自然を描いたハドソンリバー派の作品を収集展示することだった。しかし、オープン1年後に彫刻の魅力を発見し、収集を始める。
最初は伝統的な庭園計画に乗っ取って、ミュージアムセンターの庭を飾るための作品を集めていた。
ところが、1967年に転機が訪れる。
故デイヴィッド・スミスのアトリエを訪れ、戸外に置かれていた13点の作品を全て購入してしまったのだ。
恐らく事業家としての勘が働いたのだろう。オグデン氏は躊躇なく即断し、曰く「これから数多くの失敗をするだろうが、少なくとも一つだけは正しいことをしたことになろう。」果たしてその言葉通りになった。これをきっかけに、胎動していたであろうユニークなビジョンが花開き、全く新しいタイプの彫刻庭園が誕生したのである。
もはや、庭のための彫刻ではない。目指したのは、作品のドラマ性と地元の田園風景の美の調和。購入方法も次第にサイトスペシフィックな作品制作の依頼へとシフト、ついには背景となる自然の雄大さが永遠に損なわれないようにと、後ろの山までそっくり購入。
10年前からは、200年前の景観を再現すべく、野生植物の再生に取り組んでいる。
今もアートセンターのプレジデントを務めているスターン氏は、あるインタビューの中で、彫刻公園成立の経緯について「機会によるものだった」と説明している。
「土地は安価で、巨大彫刻も作られ始めたばかりで手の届く値段、作品のインストールと保存を行える技術者も自社内部で賄えた。だから、できるべくしてできたものです。」
これを偶然と解釈するのは誤りだろう。形は彫刻庭園となったが、本望は、愛する土地を讃え、人間の創造行為と土地とが美的に調和した理想郷を作る、ということに尽きたのではないか。
©Ayano Matsumae
最後に、最も大規模ながら、最も美しく調和している作品を紹介したい。スコットランドの自然に暮らす作家、Andy・Goldsworty(アンディ・ゴールズウォージー)の『Storm King Wall』だ。
©Ayano Matsumae
ゴールズウォージーは、小枝、葉っぱや草花、棘、雪や氷や石や砂など、その地の自然の中で見つけた素材のみを使って、その地の物語やエネルギーと深く関わる作品を、静かにインストールする。 ここでは付近に落ちていた石を集め、2年の月日をかけて長大な石垣を組んだ。草の中から一段づつ徐々に現れて、森の中を縫うようにくねくねと蛇行しながら谷を下り、池の中に沈むように姿を消す。また池の反対側から立ち現れると、今度は丘を一直線に上って行く。
生まれ、紆余曲折を経ながら様々な環境をくぐり抜け、一直線に伸び行く様子は、それ自体が生き物のようだが、また、運命や人生を見ているようでもあった。
Storm King Art Center 公式サイト:http://www.stormking.org
プロフィール
NILEport NY : Ayano Matsumae
東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。
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