「本物」という言葉が時には空疎な響きを持つことがある。市場にモノが溢れる今のような時代にあってはなおさらだ。それでもなお「本物」と呼ばれるに相応しい作品が確かにある。それを教えてくれたのがこのたび静かにしかし重厚な存在感で日本デビューを果たした「MILZAKHANIAN(ミルザッカニアン)」だ。
クロコダイルの既成イメージを打ち破る作品の数々。しなやかでありながら重厚なつくり。控えめでありながら高貴な輝きを放つ逸品。ボディになじむフォルムとデザインに、このブランドの哲学が見える。
写真右:Zanzibar ザンジバ(ブラック)60×38×11cm/1,732,500円
写真左上、左下は参考商品。 問い合わせ 日本シイベルヘグナー TEL:03‐5441‐4515
その主、イタリア人のエミール・ミルザッカニアン氏は、ロサンゼルスに留学中から学業のかたわら自身で美術品の取引を始め、1986年、イタリア帰国後はミラノに最初のギャラリーをオープン。たちまちのうちにヨーロッパ人のコレクターから高い評価を受けミラノの主要アートギャラリーとして認められることとなる。
その後10年たらずで氏は世界的なアートディーラーとなっていた。2001年には早すぎると言ってもいい「ハッピーリタイアをしてタイのバンコクに移住。ここで革の王者とも言うべきクロコダイルレザーの美しさに心を奪われた。でも残念ながらそれを真に実現したバッグがないことに気づいた。ならば自ら生み出そうと決意した」と語るミルザッカニアン氏。デザインは極めてシンプルだが、たとえばモンドリアンのアートイメージに触発されて作られた作品の背景には、天性の審美眼とアートディーラーの経験が見える。
「ビジネスばかりが優先される時代だが、本物をじっくり時間をかけて創りたい」という氏。ブランドのあるべき姿を、彼のバッグや靴が教えてくれる。従来のクロコダイルでは実現しえなかったしなやかな風合いには圧倒されるばかりだ。