さて、ABMB会場があるサウスビーチを離れて、ビスケイン湾を大陸側に渡ると、もう一つのアートショーの中心地が現れる。それらが集中しているのが、できたばかりのコンドミニアムや商業テナントが並ぶ開発地区『ミッドタウン』だ。
Scope会場にて:Evan Penny, Penny#1(2007)と鑑賞者©Ayano Matsumae
まだ所々残る空き地に巨大な仮設テントが張られ、それぞれがレッドドット、スコープ、ブリッジ、アートマイアミ等、中規模サイズ、中堅どころの8つのアートショーの会場となっている。
そのすぐ南側は、倉庫や修理工場の連なる寂しいエリアとなる。通り沿いには、倉庫を利用した小さなギャラリーやブティックがぽつりぽつりと点在し、いくつかのアートショーの場所を指し示すフラグが風に揺れている。
こちらどこも大きな倉庫を会場としていて、サウスビーチやミッドタウンより、エッジーでマイペースな感じだ。

NADA会場にて、雪だるまの彫刻はTony Tasset, Snowman (2008) ©Ayano Matsumae
中でも若手ディーラーが集まる『 NADAアートフェア』はリラックスムードで群を抜いており、今回のアートショー巡りのヒーリングスポットとなっていた。
ゆったりとした前庭に豪快なヤシ並木ハンモックや芝生の上では、人々がうたた寝や読書を楽しんでいる。展示されているのもロープロファイルの若手作家の作品が中心で、ディーラー達もフレンドリーだ。
ABMBのように、白いクロスをかけたシャンパンのカートは回ってこないが、パフォーマンスを終えたアーティストが賑やかな楽団を従え、チョコレートを口に放り込んでくれた
アートショーはどうしてもその性質上、売れ筋をピックアップした『見本市』となる傾向があるが、所属アーティスト達の作品を丁寧に見せ、深みのあるショーとなっていたのが、ブルックリンのPierogi、ロンドンのHales Gallery、マンハッタンの Ronald Feldman Fine Artsによる3ギャラリー合同展だ。
およそ1200㎡の倉庫を矢印に従って進むと、約20作家のソロショーとグループショー会場が次々と現れる。グラファイト(黒鉛)のみを用いて、目を疑うほどリアルなミクロの立体感を描き出したDANIEL ZELLER氏の作品のように、手間をかけて作り込まれた平面作品が主体で、派手さはないが見応えがあった。

Pyan Mrozowski, Annunciation for Black Holes(part,2008) :Acrylic on Canvas on Panel ©Ayano Matsumae

Daniel Zeller,Occupational Hazard (2008):Graphite on paper ©Ayano Matsumae

ART MIAMIのNew Media Loungeにおける Movement as Meditations on Modernity(企画・展示=CIFO )ブース光景 ©Ayano Matsumae
この辺りから西にかけてのエリアは、近年ギャラリーやスタジオが次々と移動して来ている『 ウィンウッド・アート地区』と呼ばれるエリアだ。
エリアが急速に活気を増したのは、2002年のABMB上陸以降。2004年にはパリの Galerie Emmanuel Perrotinが進出、マイアミで最も力を持つFred SnitzerギャラリーとIngalls & Associates も越して来て、名実ともにマイアミのアートの中心地区となった。
巨鯨ABMBと、そのコバンザメである幾多の国際アートショーの襲来は、マイアミのアートシーンにとってはペリーの黒船のようなものではなかっただろうか。(鎖国派がいた訳ではないが。)
特に、できかけのアート地区、ウィンウッドに大きな影響を及ぼしたであろうことは容易に類推できる。
NILEport NY : Ayano Matsumae
東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。