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NY Report vol.107 私を責めないで - ニューヨークのグース騒動
カナディアン・グース © Ayano Matsumae
© Ayano Matsumae
「ハドソン川の奇跡」と謳われた、USエアウェイズ1549機のハドソン川不時着事故。エンジンが巻き込んだのはカナディアン・グースだ。人間は無事で何よりだが、彼らにとっては悲劇である。
カナディアン・グース © Ayano Matsumae
© Ayano Matsumae
カナディアン・グースは渡り鳥だが、ニューヨーク近辺の水辺や草地では、大小様々な群を一年中見かける。この辺りに2万5千羽が定住しているそうだ。
百羽以上の大集合も見かけるが、普段は数羽、十数羽でいることが多く、離合集散を繰り返している。
V字隊列で大空を渡る姿は美しく雄大だ。
飛ぶ時にはまずリーダーが大きく「クワーッ」と声を上げる。そしてサブリーダーと交互に「クエーッ」「クワーッ」とリズムを取りながら、皆が一斉にドタドタ走り出す。巨体が次々に空に舞い上がる様子は感動的だ。
普段からよく統制が取れていて、リーダーが水に入れば皆が入り、水から上がれば上がり、身繕いを始めたら皆が一斉に身を繕い、草をほじれば皆ほじる。
身体が重いため、地上にいることが多い。長い首をピンと伸ばし、短い足でよちよち歩く姿はお世辞にも美しいとは言えないが、愛嬌がある。
カナディアン・グース © Ayano Matsumae
© Ayano Matsumae
性質は、穏やかで賢く家族思い。春には小さなヒナ達が誕生し、親に守られすくすく育つ。
人々もそんな彼らに好意的だが、あまりにも増えすぎたことから、彼らを問題視する流れもある。
彼らの主食は草や種子や小さな虫。人間が愛でるために手塩にかけた公園や庭の芝地は、彼らにとってはつつき放題のサラダボウルだ。
食べれば当然落とし物をする。草食性なので匂いもない。一雨降れば無くなるし、そう目くじらを立てなくても良いと思うのだが、ただ景観を許せない人も多いらしい。
しかしなんといっても頭痛の種は、飛行機との衝突だ。衝突数はこの17年間うなぎ上り。フライト2万回につき1990年には0.53回、2007年までにその3倍に増えた。
空港近辺の木の伐採も、威嚇も、安楽死も含めた対策が延々と続けられているが根本的な解決には繋がらない。
しかし、NYに定住しているグースのほとんどは、人間が連れ込んで、積極的に繁殖を促したものだ。
駆除法、特に殺戮の是非についての討論は、長い間、専門家のみならず一般を巻き込んで行われて来たが、今回の事故をきっかけに、1月16日付けのNYタイムズ紙にも「Don’t Blame Mother Nature for the Crash」と題された討論コーナーが設けられ、ウェブ上で意見が交わされた。
中に、はっとする投稿があった。
『もし神が人間に飛んで欲しいと思うなら、我々には翼が生えていただろう。』 空を飛ぶのは鳥達の権利であり、人間の権利ではない、ということだ。 勿論、クラッシュは起きてはならないが、鳥を巻き込まないエンジンはできないものか。
同じ事は地面や水中でも言える。
文明の利器は、動物達にとっては凶器である。凶器を振りかざして生活を便利に楽しくする。心痛むが、そのツケはどこかで清算されるのだろう。
プロフィール
NILEport NY : Ayano Matsumae
東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。
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