人気機種「ダイアナ」の限定バージョン © Ayano Matsumae
80年代にロシアのキエフで生産されていたデッドストック「Kiev 4 ref」 © Ayano Matsumae
「フィッシュアイ2」で撮影 © Ayano Matsumae
日本を含め、世界中に熱烈なファンを持つロシア製トイカメラ「ロモ」の直営店がついにニューヨークにもオープンした。場所はかつて「ボヘミアンの街」と呼ばれたグリニッジビレッジ。直営店としては世界最大で、「ロモ」関連商品のほとんど全てが揃う。
ご存知の方も多いかも知れないが、ロモとは、1980年代にロシアで大量生産されて旧共産圏に流通した、大衆向けカメラのひとつ。
1991年、当時ウィーンの学生達がプラハに旅した際に、ロモ社の「 LC-A」という最もポピュラーな機種と出会い、その手軽さと画像の魅力に打たれて世界に広めたのが、今のブームの始まりだ。
その持ち味は、精巧さや正確さではなく、ちょっとピンボケしたような像と、鮮やかでレトロな色調、器械の緩さからくる、思いがけない光の効果。
まず地元ウィーンで人気に火がつき世界に飛び火、今では、プロの写真家から初心者まで、世界で100万を越える愛好者が、公式団体「The Lomographic Society(ロモグラフィック・ソサエティー)」を通して、活発なコミュニケーションを行っている。
写真を日記のように投稿したり、そんな投稿写真のアーカイブから写真集を出版したり、イベントを開催したり。東欧で消え逝く運命にあったカメラ達が、インターネットという飛び道具をフル利用しているのも面白い。
さて、NYショップの面する8thストリートは、古い靴屋達が軒を連ねるちょっと胡散臭い佇まいの商店街であったが、久々に訪ねると、おしゃれなカフェやスパがポツポツとオープン、いささか雰囲気が変わっていた。この辺りも少しずつ変化しているようだ。
自然光のよく差す店内は、3分の2がショップコーナー。現行モデルのカメラやアクセサリー、バッグや書籍の他、人気機種のストア限定モデルや、30年代に始まるロシア製デッドストックも並ぶ。
圧巻なのは、35000枚の写真からできた、世界最大のロモウォール(ロモの壁)。写真は全て、世界のロモ愛好家が切り取った、ニューヨークの風景だ。

© Ayano Matsumae
壁の前はギャラリーコーナー。ヴィンテージの大きな腰掛けとテーブルが並べられ、テーブルには自由に閲覧できる写真集が無造作に置かれている。
地元コミュニティーに根ざした活動も活発だ。ショップでは、ほぼ毎週、自由に参加できるイベントやワークショップを行って、カメラの貸し出しも行っている。アナログとハイテク、地元と世界が、ロモではいい感じに繋がっている。
実際の使い心地はどうだろうか。今回「フィッシュアイ2」というカメラを使わせてもらった。プラスチックのボタンはあまりに軽くて頼りない気がして、写っているのかどうか、正直、現像するまで不安だった。
ミッドタウンで現像を終えた袋を受け取り、そそくさと開ける。中から現れたのは、昔の駄菓子の箱やマッチ箱のような懐かしい色調の、見た事のないニューヨークの光景。
プラスチックの箱が生み出す詩的な光景。カメラというよりも魔法のようだ。
NILEport NY : Ayano Matsumae
東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。