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ニューヨーク最大のアートショー、アーモリーショー開催(1) 景気とショーの変化
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ニューヨーク最大のアートショー、アーモリショー メイン会場となったPier94 © Ayano Matsumae
メイン会場となったPier94 © Ayano Matsumae
Christian Holstad, Reciever(2008-2009): Mixed media, speaker, metal framework
Christian Holstad, Reciever(2008-2009): Mixed media, speaker, metal framework © Ayano Matsumae
3月5日~8日、出展者の誰もが不安を抱えたまま、ニューヨークで最大のアートショー、アーモリーショーが開催された。
こんな景気で、果たして人は来るのか、アートを買うのか。景気がピークに達した昨年にあちこちで開催されたサテライトショーも、今年はぐっと数が減った。
そんな流れに逆行するかのように、今年のアーモリーショー参加ディーラー数は昨年の160から一気に増えて252。大きな要因は、モダンとクラシック・コンテンポラリーにフォーカスした新部門『アーモリー・モダン』が増設され、ここに70近くの新ディーラーが加わったためだ。
Tony Matelli, Double Meat Head(2008): Cast aluminum, cast bronze, urethane and paint
Tony Matelli, Double Meat Head(2008): Cast aluminum, cast bronze, urethane and paint © Ayano Matsumae
その一方で、今年少なからぬ数の常連ディーラー達が会場から姿を消した。 中でもアーモリーショー創設者の一人、マシュー・マークスのギャラリーの不在は、ショーの性質の変化を人々に印象付けることになった。
背景には、ショーの組織変化がある。2007年、アーモリーショーは実質上、トレードショーなどのイベントと商業不動産を扱う『マーチャンダイズ・マート・プロパティーズInc.(MMP)』の傘下になった。ここ数年 、MMPはアートイベント部門に梃入れしており、アーモリーショーについてはNYのアートバーゼルに発展させる目論みという風評だ。
Whitfield Lovell, At Home and Abroad(2008): Conte, crayon on wood with target, nails and fabric
Whitfield Lovell, At Home and Abroad(2008): Conte, crayon on wood with target, nails and fabric © Ayano Matsumae
いくつかのディーラーが中心となって、グラマシーの小さなホテルを会場に始まったアーモリーショーだが、幅広い需要に対応するトレードショーの性質を強めていくようだ。それはごく当たり前の現象かも知れないが。
話を今年のショーに戻そう。メイン会場内部から臨時階段を上り、新設された『モダン』の会場へ。雰囲気もガラリと変わる。メイン会場がチェルシーからダウンタウンとすると、新部門『モダン』は57丁目からアッパーイーストサイドという雰囲気だろうか。モダンと名付けられながらも、実際には若い作家や、中堅どころの最近の作品も多く扱っていた。
今年気になったのは、大型で派手な作品より、手仕事の温もりや、静謐な佇まいを持つ作品。
例えば、時を経た飴色の廃材に、木炭で描かれた人々の風合いも美しい、静かなポートレート。時を経た板の奥に溶け込んで、安らぎに包まれているかのような3人だが、中央の一人の胸には的が据えられている。廃材の無数の古い釘穴は、矢の跡を暗示しているようだ。
Giulio Paolini, L’Altra Figura (1984): plaster casts
Giulio Paolini, L’Altra Figura (1984): plaster casts © Ayano Matsumae
ブロンクス出身のWhitfield Lovell(ウィットフィールド・ラヴェル)は、南北戦争から1950年代、すなわち公民権運動の初期までに生きたアフリカン・アメリカンの日常のポートレートを描き続ける作家だ。古い写真やポストカードを手がかりに、木炭などモノトーンの画材を用い、描かれた人の生活や運命を暗示させるような古道具を組み合わせたオブジェを作る。
2体の同じ石膏像が差し向かいに置かれ、床に散る砕けた自分を見つめる、という意味深な作品は、イタリアのコンセプチュアルアーティスト Giulio Paolini (ジュリオ・パオリーニ*)の作品。過去のアートを現代に引っ張り込み、入念なセッティングによってある種の心理迷宮を作るのが彼の作風だが、その迷宮の中で、人は己の影を見ずにいられない。
作品をしばらく見つめたあと、思わず心の中で呟いた。どうか、壊れた自分が本物の自分でありませんように。
註*パオリーニは、また60年代後半のイタリアのアートムーブメント『アルテ・ポーヴェラ(Arte Povera,=貧しい芸術)』の旗手として知られる。
プロフィール
NILEport NY : Ayano Matsumae
東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。
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