
バレンシア旧市街、メイン会場の市庁舎広場には、連日午後2時の爆竹ショー目当てに押し寄せる観光客で身動きもできないほど。バレンシア市の人口80万人が、火祭りの週は160万人に膨れ上がる。ここに設置されるファヤ(人形)は、毎年すべてのファヤの最後に燃やされる。今年は動物をテーマにタイトルは『ビオパーク』。
昼夜かまわず、それどころか早朝も深夜もなく「バババンッ!」という爆竹特有の破裂音が突如、けれどもひっきりなしに、バレンシア市街の至るところで轟きわたる。
大人から子供まで、市民も観光客も、この祭りの週だけに限ってはそんな戯れさえ大いに無礼講。
毎日午後2時になると、メイン会場である市庁舎広場では、名物の『マスクレタ(爆竹ショー)』が始まる。このとんでもなくスペクタクルな催しを少しでも近くで体感しようと、交通規制された大通りに身動きできないほど押し寄せる大観衆。やがて爆音と爆風、地鳴りと白煙の狂騒だ。
予想を超えたあまりにも圧倒的なスケールに、驚愕と呆然、さらに恍惚さえ混ざり合うような時空間が生まれ、広場は喝采と口笛に包まれる。火祭りを訪れた者への、まずは最初の洗礼ともいえよう。
パンプローナの牛追い祭り、セビーヤの春祭りと並ぶスペイン三大祭りの一つとして、バレンシアの火祭りは世界中から観光客を集める。3月19日の『サン・ホセの祝日』に合わせ、この壮大な祭りは毎年3月12日から19日、バレンシア旧市街を中心におこなわれる。
スペイン語のサン・ホセは、キリストの父である聖ヨセフのことで、バレンシアの守護聖人を指す。ヨセフの職業が大工であったことから、町の大工たちが毎年この季節の仕事納めに、焚き火で木切れを燃やしたことに起源するという。この期間、文字どおりバレンシアは眠らない。市内の広場や公園、大きな交差点から住宅地の小さな十字路まで、あらゆるスペースに約750体もの張子人形が設置、展示されコンテストにかけられる。ファヤと呼ばれるこれらのモニュメントは、自治体ごとに1年間かけて作られた力作ばかり。それぞれに自然環境や政治問題、アートやファッションなどのテーマを持ち、高さ1メートルから20メートル以上、最高制作費は数千万円にも及ぶ精巧な芸術作品だ。さらに9万人以上の市民がこの日のための民族衣装をまとい、深夜まで献花行進の列を連ねる。花束で飾られる巨大な聖母像は、人々の敬虔な祈りを受け止めながらバレンシアの街を見守る。
遠近の爆竹音に包まれ、深夜の花火が炸裂し、大量の火の粉を撒き散らすファイヤーパレードがねり歩き、人々のテンションも最高潮に達する19日の夜、祭りのフィナーレとなる『ラ・クレマ(点火)』で、コンテストで最も投票数の多かった作品以外の人形をすべて燃やしてしまう。なんとも熱く、そして潔い、火祭りの終焉。春の訪れを寿ぐ人々の心は、早くも来年の準備へと向かうのだという。
問い合わせ
スペイン政府観光局 URL:http://www.spain.info/jp http://www.turisvalencia.es http://www.fallas.com
更新日:2009年6月12日












美と陽光の祝祭
サン・ホセの火祭り
