「足柄の箱根飛び越え行く鶴の…」と、箱根の雄大な山を鶴が軽々と越えていく風景を羨望の眼差しで古人は詠った。まさにこの万葉歌を思い出させるような、緑深い箱根の山々をうねるようにして走る道路を疾駆する悦びを大切な人と味わいたいのなら、乗るべき車はレーシーなスポーツクーペに限る。それがスーパースポーツカーのシンボル「フェアレディZ」なら格別だろう。ステアリングの抜群の感度のよさといい、加減速の上質なフィーリングといい、箱根のような山道でこそ最高のパフォーンスを発揮してくれるはずだ。この流麗なクーペで湯本温泉郷から宮ノ下温泉郷へと山を駆け上がっていくと、箱根連山をバックにラグジュアリー・リゾート「箱根吟遊 武蔵野本館」が姿を現す。今回のグランド・ツーリングの目的地だ。
写真上/琉球畳が敷かれたロビーから見渡す箱根連山の風景は「箱根吟遊」宿泊者だけが手にすることができる。
写真左/ラウンジ「吟遊詩人」で、絶景を愉しみながらアフタヌーンティを楽しみたい。 写真中/柔らかな陽光に包まれるロビー。 写真右/四代目・太田明弘氏が、親友のアーティストに製作してもらったという鉄板の表札。
車を降り、ロビーに足を踏み入れると目に飛び込んでくる箱根連山のダイナミックなビューに誰もがまず息を呑むことになる。驚きもそのままに、スタッフに案内され、渓谷にせり出したラウンジでハーブティのウェルカムドリンクを飲みながら箱根の山を全身で体感すれば、今まで経験したことがないような魂の高揚と同時に果てしない解放感に満たされていく。
バリ島のラグジュアリー・リゾートを思わせる演出が施された空間に佇み、眼下の早川、眼前の箱根連山というダイナミックな自然を眺めていると、まるでバリ島のサヤンやアマンダリにいるかのような錯覚に陥ってしまう。自然を五感で感じさせてくれもし、またパートナーとの大切なひとときをいっそう色めかせてくれる空気感なのである。
写真上/1階ゲストルーム「名月」。二間続きの部屋には、さらに露天風呂が備えられたテラスがある。
写真左/箱根連山と向き合う場所にあるエステルーム「Ginyu-Spa」。ボディからフェイシャルまで充実のメニュー。 写真中/渓谷にせり出した大浴場「月代」。朝霧が煙る早朝に風呂に入ると、鳥の鳴き声の合唱を愉しめるという。 写真右/開けた景色を眺めながら二人 だけの時間を過ごすことができる客室露天風呂。
写真左/ブルーベリーアイスとバナナフレーバーのキャラメルソースが添えられたレアチーズケーキ。 写真中/ブラックペッパーで炒めた伊勢海老の身とフォアグラをトマトソースで。その下には黒米のリゾット。 写真右/相模湾でその日の朝にとれた鮮魚を使った活け造り。彩りも鮮やかに季節の味を堪能できる。
もとは箱根の老舗旅館として存在していた「武蔵野本館」をラグジュアリー・リゾート「箱根吟遊」へと生まれ変わらせたのは同館四代目・太田明弘氏だ。氏は旅行代理店に勤務していた時代、バリ島を何度も訪れる機会に恵まれた。そしてサヤンやアマンダリなどバリ島の秘境リゾートに足を運ぶうちに、箱根の風景と似たものをその場所に感じたのだという。そこで得た知識を箱根の旅館にフィードバックしたいと考えた氏は、当時失われつつあった旅館の「色気」を取り戻す空間創りから始めた。
「渓谷にせり出したロビーや大浴場を創ったのも、周囲の景観に溶け込む空間にしたかったから。バリ島のリゾートはとても色っぽいですよね。異性が恋しくなると表現したらよいでしょうか。そのような空気感を創りたいと思ったのです」
写真上/宵闇に包まれたガーデンバー「明星」。ここでプロポーズして結婚したカップルは多いそうだ。
写真左/ガーデンバー「明星」の脇から延びる、離れの浴場へと続く旅情溢れる回廊。 写真中/廊下に並ぶ灯篭の明かりがゲストを優しくもてなす。 写真右/カクテルを飲みながら、大切な人と二人で交わす会話は忘れられない思い出となろう。
そのような想いを形にするため、ロビーやラウンジなどパブリックスペースの平面図は自身で引いた。氏の想いが伝わったからだろう、ガーデンラウンジ「明星」でプロポーズしたカップルもいるという。なかには、ここでプロポーズをするために訪れた外国人宿泊者もいた。そして、結婚して夫婦となった彼らが子どもをつれて帰ってくる、そんなことも少なくないそうだ。これから未来を見据えようとする二人も、長い旅路を寄り添うように歩んできた二人も、出会えたことに感動せざるを得ない、そんな感慨に浸る一日を送れるだろう。箱根への小さな旅がもたらす感動はあまりにも大きい。
問い合わせ
箱根吟遊 武蔵野本館 神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下100‐1
0460‐82‐3355 http://www.hakoneginyu.co.jp/
更新日:2009年6月23日





















