GANJIN DETAIL (NEGATIVE), 2000-2007, 120"X120" Lambda Digital C - Print Mounted on Aluminum ©Mike + Doug Starn
GANJIN, 2000-2004, 264"X264" Toned Silver Prints on Thai Mulberry Paper ©Mike + Doug Starn
GUANYIN STUDY 3, (2005-2007), 20"X20", Unique Color Carbon Print with Gold Leaf ©Mike + Doug Starn
ATTRACTED TO LIGHT, 1996-2004, 120"X264", Toned Silver Prints on Thai Mulberry Paper ©Mike + Doug Starn
2000年のある日、彼らのスタジオに日本から一本の電話が舞い込んだ。
2000年、10年後の2010年の完成を目処に、奈良の唐招提寺金堂の大修理が始った。実に100年ぶりの大修理という。開始の折、10人のフォトグラファーを国内外から招聘し、寺と、国宝である鑑真和上坐像を撮り下ろしてもらうというプロジェクトが企画された。その参加依頼の電話だった。
「勿論、この貴重な機会にとても興奮したよ。僕たちはそれまで歴史的な絵画や像をよく作品に取り込んでいた。こういう像は撮影許可を得るのがとても難しいものだ。
鑑真を見た時には、ただ驚くばかりだった。彼が生きていた時に作られたという等身大の像は、金箔で覆われていた。長い時を経て、所々の金箔が細かく剥げ落ち、その下からは暗い粘土が見えていた。だけど大きく剥がれた箇所はなく、金箔が残った窪んだ箇所が、とりわけ明るく輝いていたんだ。明るく見えるべきところが暗く、暗く見えるべきところが明るいその様子は、写真のネガを想起させるものだった。
さらに大きな感銘を受けたのは、彼が盲目だったことだ。彼はまさに『光に満ちた暗闇』を見ていたんだ。
僕たちはフォトグラファーとして、初めは『光』に取り憑かれていた。光はエネルギーでもあるが、古来より神であり、パワーと知識のメタファーだ。もう一つ、反対に僕たちは黒にも執着した。黒はただの影や闇ではなく、完全な光の吸収というところに惹きつけられた。黒は虚無であると同時に、光の蓄積でもある。神と思っていたものは悪魔で、悪魔と思っていたものは神・・・。僕たちにとって鑑真は、暗黒が光の吸収であると言うことを人間化した存在、まさしく化身だった。」
「鑑真の撮影を持ちかけられた時、 僕たちの大きな関心である物理と仏教哲学とがとても似ていることを知り、仏教の勉強に大きな興味を覚えたんだ。そして鑑真の撮影の後、仏像の撮影を始めた。もっと数多くの仏像を撮りたいけれど、なかなか許可を取るのが難しくてね。」
唐招提寺での撮影を元に制作された「Toshodaiji」は、「Absorption of Light(光の吸収)」という作品シリーズの一つとなった。光と暗黒の相互作用を追ったこの作品群の中には、葉脈を拡大した「Black Pulse」、光に魅せられるという未知の特性を持つ夜行性の生物、蛾を追った「Attracted To Light」、ニューロンのように枝を無数に分岐させていく大木のシルエット「Structure of Thought」が含まれている。それらは全て、ビッグ・バンブーと同様、人間、人間性のポートレイトだという。
気になるのは、それらの色調、余白、主題は、どうしても日本画を想起させることだ。
「日本はとても好きだよ。伊勢神宮にも行ったけど、一年に一度すべての装束や祭器が刷新されるというのはとても印象深かった。僕達の作品に日本的なところを認めてくれるのは嬉しいけれど、特に意識した訳ではなく、ミニマリズムや、物事は常に変化し、朽ちいくものだという考え方に従うと、似てくるのかも知れないね。」
※ビッグ・バンブーは今年6月から8月までの第2、第4土曜に一般公開。 詳しくはWebサイトを参照。
マイク+ダグ・スターン プロファイル
Mike + Doug Starn
1961年米国NJ州生まれ、一卵性双生児のアートユニット。1984年、ボストン美術館付属美術学校修士課程修了。 独特の手法で写真を用いながら、光、スケール、時間などをテーマとしたメッセージ性の強いマルチメディア作品を制作。2005?2009年、ニューヨーク地下鉄サウスフェリー駅に永久保存インスタレーション「 See it split, see it change 」制作。現在ビーコンで 実験的アートプロジェクト「ビッグ・バンブー」 継続中。2010年、デトロイト・インスティチュート・オブ・アーツにて、「ビッグ・バンブー」展開催予定。日本での展覧会歴は『ダグ&マイク・スターン』展( 直島コンテンポラリーミュージアム、1993年)、巡回展 『GANJIN-鑑真和上と世界の写真家展』( 唐招提寺平成大修理関連企画、2000年~)等。MoMA 、メトロポリタン美術館、ホイットニー美術館初め、日本では直島コンテンポラリーアートミュージアム、横浜美術館、水戸芸術館等に作品所蔵。NY在住。出版物、展覧会スケジュール等は公式ウェブサイトに掲載。
公式ウェブサイト:http://www.starnstudio.com/
NILEport NY : Ayano Matsumae
東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。
更新日:2009年7月17日




