旅好きな私ですが、意外にもザルツブルクは"処女地"でした。モーツァルトの生誕地であり、音楽活動が盛んな街、幼少の頃鑑賞して記憶に残っている名作「サウンドオブミュージック」ゆかりの地であることは知っていましたから、興味は持っておりました。
そんな街に、歴史ある「ザルツブルク音楽祭」を体験するために訪問できたことは、実に幸運なことでした。
人口15万人という小ぶりな街なのに町中に教会が多い。しかもどれも美しく荘厳なのには驚きました。山に囲まれ厳しい冬を乗り越えなければならないこの地に住む人々は、せめて涼しく日が長い夏を存分に楽しもうとしているようでした。夏の終わりに音楽祭が開催されるのも、去り行く夏を盛大に送ろうという意味があるのかもしれません。
みなさんはザルツブルクにどのような印象をお持ちでしょうか。たとえば人々の気質はどうでしょう。実は私はこの街の人々は神経質で気難しいのではないかと思い込んでいたのです。しかしそれは現地入りして見事に覆されました。人々はよく働き、明るく気さくなんですね。美しい街にふさわしい美しい心の持ち主でした。
現地入りした翌日、夕刻に会場入りしました。鑑賞した演目は「モーゼとファラオ」。完成度の高さに旅の疲れも吹き飛び、感動で胸が一杯になりました。
2日目もやはり夕刻から会場に入り、この日は「フィガロの結婚」のプレミアム公演を鑑賞する機会に恵まれました。人気の演目だったこともあり、会場入りした多くのセレブリティの姿が忘れられません。そのほとんどがパートーナー同伴というのが、また素晴らしい。日本ではカップルでこのような場所に足を踏み入れるという習慣が定着していませんからね。いい勉強になりました。
これからはコンサートや演劇、晩餐会などには妻を同伴して出席してみようかと、真剣に考えているところです。そのような機会を増やしていけば、いずれ同伴での行動も自然になり、周囲から見ても自然で感じのいい「2人」になれるかもしれませんね。概して日本人の男性はこういうことに不慣れで動きがぎこちなくなりがちですから。
さて話を音楽祭に戻しましょう。いよいよ私たちのツアーの最終日となった3日目。この日はリッカルド・ムーティ指揮によるコンサートを鑑賞。幕間にはアウディのブースで一服しながら、どのような人たちが集まっているのかをちょっと観察しました。ロングドレスの女性、タキシードの男性、みなさん本当に美しくダンディな着こなしで、その姿は会場に一層花を添えているようでした。
ところでみなさんはオペラにはどのくらい親しんでいらっしゃいますか。クラシックのコンサートにはよく行くが、オペラはあまり・・・・・・という人が意外にいらっしゃるようですね。私も例外ではありませんでした。敷居が高いというのでしょうか。
音楽祭を体験したことで、それは誤解だということがよくわかりました。オペラはヨーロッパでは、上質の娯楽なのです。日本で歌舞伎がそうであるように。
オペラも歌舞伎も、楽しいか楽しくないか。それが全てです。理屈をこねて難しいものにする必要はないのです。そう言われても・・・・、と疑心暗鬼の方がいらっしゃるようなら、「事前学習」をお勧めします。
観賞用のDVDが発売されていますから、それを見て内容を理解して、本番に臨めば、存分に楽しめるはずです。
実は私も渡欧前に、「モーゼとファラオ」と「フィガロの結婚」を予習しておいたのです。やはり効果は抜群で、現地でライブを体験した時の感激は言葉には尽くせません。なかでもラストのアリアは、特別に素晴らしかった。

1920年の第1回目から今年で89年目を迎えるこの音楽祭は、「伝統」の中に革新を感じさせる演出が光ります。
クルマの世界的ブランド「アウディ」がこの音楽祭のメインスポンサーを務めるのも、「伝統と革新」の精神に共感したからなのだと思い至り、時代を超えて生き残るものは、どのようなものでも「伝統」を守りながらも、時代の精神に寄り添いながら「革新」を目指すものなのだろう・・・と考えながら、ザルツブルグを後にしました。
更新日:2009年10月8日














