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温かいスープの恋しい季節である。
ニューヨークの冬はとにかく寒い。マイナス10度以下になると、呼吸するだけでも胃が縮みあがる。
こんなときにはとにかく身体の芯から温めてくれる、熱いスープを食べたくなるのだ。

こちらで日常の食卓に欠かせないスープは、世界最古のファーストフードでもある。
B.C600年のギリシャでは、豆や野菜を込んだスープが路上で販売されていたという。

ニューヨークでは健康志向と80年代からの女性の社会進出の流れを受けて、ここ10年ほどの間にホーム・スタイルの健康的なファーストフードとしてすっかり定着した。ニューヨークで18店舗を展開している有名なスープチェーン「Hale and Hearty」の第一号店がオープンしたのは1995年。フォークで食べられるほど具沢山で濃厚なスープが特徴で、女性も男性もメインディッシュとして食べている。

小さなスープスタンドは街のいたるところにあり、デリやスーパーでも、セルフサービスコーナーに大概6~8種類の熱々のスープが用意されている。

定番スープも挙げるときりがないが、アメリカで生まれたものを挙げてみる。まずあっさりとしたキチンヌードルスープ。チキンと野菜のストックに、細かく砕いたチキンと細かいヌードルが入っている。一番庶民的で、風邪を引いたときの定番メニューだ。マンハッタンクラムチャウダー(トマトベース)、テキサスのチリ(食用大トウガラシ、ひき肉、豆がベース)ニューオーリンズのガンボ(オクラ、トマト、ソーセージ、海老、米がベース)など人々の生活の知恵から生まれたスープは、一皿で野菜やたんぱく質もたっぷり摂れる。

もちろんニューヨークでは世界中のスープが楽しめるわけで、イタリアンやフレンチを始め、ヨーロッパ由来のものが多いが、近年徐々に浮上しているのがアジアのスープだ。ベトナムのフォーや韓国のスーロンタン、日本のそばやラーメンは"ヌードルスープ"として、そして中国のショウロンポウも"スープ・ダンプリン"として紹介され、以前はアジア人しかいなかったチャイナタウンの店にも多くの民族を見かけるようになった。

またこちらでは貧しい人々に無償で食事を提供する場所のことを「スープ・キッチン」と呼ぶ。

多くは教会やチャリティー団体と一般ボランティアによって運営されており、食材は「フードバンク」から調達される。

なんと、初めて「スープ・キッチン」を開いたのはあのアル・カポネである。
時は1930年初頭、アメリカ全土を襲った大恐慌で多くの人々が職や住む場所を失った。カポネはそのダーティなイメージを払拭し、自らの立場を有利にするために、毎日3食のスープとパンを貧窮した人々に提供したのである。
スープが選ばれたのは、経済性に加えて調理とサーブと後片付けの効率のよさにあった。

今ではスープ以外にメインディッシュやワイン、デザートまでサーブされたり、クリスマスなどの祝日には特別メニューも用意される。普段孤立しがちな人々にとって、「スープ・キッチン」は食事の場であるだけではなく、大切なコミュニケーションの場だ。




NILEport NY : Ayano Matsumae

東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。

   


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