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中でも、日米の熟練料理人達の実演によるディナーパーティー
"美食発見:日本食文化の夕べ(Gastronomic Discovery: An Evening of Japanese Food Culture)"
は、フェスティバルのハイライトのひとつといえるだろう。

招待されたのはニューヨークを中心としたレストランオーナー、シェフ、メディア、料理学校関係者、流通関係者などの総勢約400名。

 
  
まず安藤エリザベス氏によるレクチャーが行われ、様々なオードブルがテイスティングされた後、いよいよ料理の実演。日本側からの参加は、京都の老舗料亭「たん熊北店」「たん熊熊彦」の店主、栗栖正博・甚の両氏と、京都「梁山泊」の主人、橋本憲一氏。

栗栖基氏が作ったのは「蓮蒸し・鼈甲餡(べっこうあん)」。ふんわり蒸し上がった蓮根と餅粉の真っ白な生地の中に、海老、ホタテ貝、鰻など味も彩りもとりどりの具たちが潜み、あたかも雪の中から見え隠れする春の息吹のよう。両者の味を絡めるのが一番出汁と醤油味の"鼈甲餡"。少しトッピングされた緑鮮やかな本山葵がぴりりと味を引き締める。

 
  
そして、橋本憲一氏は「刺身盛り」。日本直送のサヨリ、アオリイカ、アイナメ、ウニ、現地で入手したサーモン、マグロ、ヒラメなどで、皿上に日本画を描くように、繊細で華やかな日本の春を盛り付けた。さらに「ビッグアップル」と呼ばれるニューヨークに敬意を表して5つのリンゴをあしらうその心は、「日本料理は伝統的なわび・さびの世界だけではなく、花も実も伊達も自由に表現できる楽しい料理だということを伝える」こと。

一方、米国側から参加したのは「ブーレー」「ダニューブ」などのオーナーシェフ、デイビット・ブーレー氏。世界の食材を縦横に駆使する革新的なフレンチは、食への深い洞察と確かな技に裏付けられたもの。氏が披露したのは、日本食材を使ったフレンチ「豆腐のブラックトリフ入り出汁ソース」と「フォアグラとホタテ貝の味噌入り湯葉巻き」。氏曰く、「日本は、米国にまだ広く紹介されていない高品質の食材の宝庫。」

これらの料理に舌鼓を打った後、各種和牛ステーキ、炊き込みご飯、盛りそば、刺身など、様々なメニューをサーブするステーションで、思い思いの日本食を試してもらうという計らい。

 
  
「料理、シェフ、参加者、どれを取っても一流。このような特別な場に参加できたことは嬉しく、光栄です。」「今宵ここにいるのは、ニューヨークで一番幸せな人々だ。」食のリーダー達の惜しみのない賞賛の数々に、日本の風土に育まれた食材や料理が、最高の形でニューヨークの街に伝わっていくことを期待してやまない。

今回のフェスティバル開催の趣旨は、米国内での日本食のさらなる浸透だけではなく、世界における発展も視野に入れたものだ。ニューヨークは世界屈指の観光地のひとつ。市内に900件の日本食レストランを有するこの街は、他国からの観光客にとっても日本食との重要なコンタクト・ポイントになる。

 
  
ニューヨークにも、びっくりするような自称「ジャパニーズ」料理があるのは確かだし、誤解に触れると、日本食を正しく知ってもらいたいと思うのも事実だ。しかし今回のシンポジウムや実演で示されたのは、日本食は他国の料理人と関係を持ちながら、ダイナミックに発展する可能性に満ちているということ。日本食も古来から外来の食文化を自らに取りこんで発展してきた。それが食文化の本質ではなかろうか。食は食される土地と切り離しては存在しない。この街で型を破りながら新天地を切り開く人々を見ていると、正統派であれ、フュージョンであれ、日本の食材、日本の調理法の魅力が異国に伝わり、その土地の人々に受け入れられて土壌に合った見事な花を咲かせてくれればよい、と思うのである。


写真提供:ジェトロ




NILEport NY : Ayano Matsumae

東京大学文学部・美学芸術学科卒業。東京で国内外のアパレル、イベント企画会社等を経て、フリーランスライターとなる。現在ニューヨーク在住、アート、ライフスタイル、フード・カルチャー等をカバー。

   



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